年末年始の休みをきっかけに、自分のキャリアをじっくり考え始めた方も多いだろう。キャリアチェンジを考え始めた方も、今の会社で頑張る決意を新たにした方も、最も避けるべきは、視点が近視眼的になることだ。
おそらくほとんどの方が、自分のこれまでの経験から積み上げて、キャリアプランについて考えたはずだ。しかし、会社やポジションは、あくまで社会の中に存在しているものであり、社会環境が変化すればそれが台無しになってしまうこともある。
バブル後の金融危機と、それに伴う大手銀行、証券会社の倒産。それに伴ってキャリアプランが崩れた多くのエリートサラリーマンの例を挙げるまでもないだろう。
だから、私たちは社会の未来を常に予測しながら、それに耐えるキャリアプランを描かなければならない。
社会に対する眼差しを育む、もっとも手っ取り早い方法は読書である。そこで、特に若手ビジネスパーソンに手にとってほしい本を紹介したい。30代のハイキャリアの方で、万一もし読んだことがない本があれば、一読して損はない。
また、特に最終面接において面接官から、「最近読んで影響を受けた本」を聞かれることが、ままある。この質問に対して反射的に答えられないようであれば、ここで挙げた本を読んで、面接の対策をするのも良いだろう。
- キャリアを考えるとき、この世界の「不確実性」を織り込んでいるか
- 「定年までなんとか逃げ切ろう」という考え方はもう通用しない
- 企業と個人の関係性の変化のトレンドの前に、あなたの会社は「信頼」に足るだろうか
- 成功者に共通するスタンスを若いうちに身につけよう
- 編集後記
キャリアを考えるとき、この世界の「不確実性」を織り込んでいるか
ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質
特に金融業界で働く方は、「ブラック・スワン」の意味は押さえておいてほしい。「誰も予想していなかった、ほぼありえない事象」である。「白鳥は白い」という常識が、遺伝子の突然変異で出現した黒い白鳥が発見された瞬間に、ひっくり返ってしまった逸話から来ている。
そう、リーマン・ショックやアラブの春、地震、津波、原発事故と、私たちのまわりはブラック・スワンであふれているではないか。昨日までは「ありえない」と言っていたのに、一度起きると、まるであらかじめわかっていたかのように、それらしく説明され、偶然ではないように思えてくるのだ。
世の中が非連続的に激変し続けることを踏まえて、社会をどう考え、自分はどう行動をすればよいのか教えてくれる一冊だ。自分が生きているのが、ブラック・スワンが現れる不確実な世界だということを理解した上で、自分の人生やキャリアをデザインしていきたいものである。
ちなみに、金融志望者なら、同じ著者の著作である「まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」も合わせて押さえておきたい。
著者は、かつてウォール街でトレーダーとして活躍した、金融業界の超有名人である。著者がアドバイスするファンドは、世界金融危機下に莫大な利益を得たというエピソードもある。
また、「ブラック・スワン」の不確実な世界の中で生き抜く方法の答えが、最新作である「反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方」で示されている。少し難解かもしれないが、本書を読んで興味を持った方はぜひ続けて読んでみてほしい。
「定年までなんとか逃げ切ろう」という考え方はもう通用しない
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
「今の仕事はつまらないし、スキルもつかないが、早期退職までなんとかしがみつこう」と考えている方が万一いたら、かなり危険だ。すぐこの本を熟読してほしい。
遠くない将来に到来する「人生100年時代」、つまり平均寿命が100歳を超える時代に、人生にどんな変化が起き、どんな人生戦略を取るべきか、を書いた本である。
「人生100年時代」においては、大学卒業から60歳までの期間と、60歳から100歳までの期間が、ほぼ同じ長さになる。そして、60歳という従来であれば定年の年齢を、多くの人が非常に健康な状況で迎えることになる。つまり、60歳イコール定年、60歳で引退して余生を送る、という常識は古い。
あなたは、60歳以降の長い人生を充実して楽しんで送るために、40年間働かなくてもいいだけの財産を形成できるだろうか。これはほとんどの人にとっては難しいだろう。
では、60歳以降も長く働き続けるための、知識やスキル、健康状態を保てそうだろうか。
これらの問いに自信を持ってYESと答えられるビジネスパーソンはあまりいないかもしれない。しかし、今気付いたことが幸運だと考えよう。人生100年時代の長い人生を楽しむため、詳しくは本を読んでいただきたいが、有形無形の資産(スキル、健康、人間関係など)を形成する人生設計が必要だ。
キャリアの側面だけ言及すると、まず「60歳イコール定年」でいいと思っていたら、これまでの常識は捨ててほしい。その常識を前提として、今いる会社に定年まで留まろうという選択をしている場合は、60歳以降も働き続けるための資産を今いる会社で形成できそうか、ゼロベースで考えてほしい。
また、もし転職するのであれば、あらゆる有形無形の資産を積み重ねていくようなキャリアプランが実現できるような転職にしなくてはいけない。
企業と個人の関係性の変化のトレンドの前に、あなたの会社は「信頼」に足るだろうか
ALLIANCE アライアンス―――人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用
この本が示している「会社と働く人の結びつきの変化」は、すでにシリコンバレーでは当たり前になりつつある。日本でも、数年ほど遅行しながらも同様の社会が到来すると思われるので、数年以内にキャリアチェンジを考えている方はぜひおさえておいてほしい。
ちなみに本書の著者は、LinkedInの共同創業者として知られ、シリコンバレーでもっとも成功したエンジェル起業家として知られるリード・ギャレット・ホフマンなどの、そうそうたるメンバーである。
もともと、個人と企業の関係性は、ひとつの会社に人が従属して、一生を過ごしていくという考え方が主流だった。しかしこれは、製造業に最適化された前時代の考え方である。
これからソフトウェアの重要性が増していく世の中において、組織と個人は、取引や契約でなく、信頼やパートナーシップで結びついていくと説いている。これが標題の「アライアンス」という考え方である。
ちょうど転職を検討している方は、今志望している会社とは「アライアンス」の関係性を結ぶことができそうだろうか。また、もっと言うと、企業に雇われなくても、自分自身でキャリアを築いていくこともできる。
そうした時代に、自分は個人としての生き方をどうデザインしていくか、考えてみてほしい。
成功者に共通するスタンスを若いうちに身につけよう
経営者になるためのノート ([テキスト])
ご存知、ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長である柳井正氏の著作である。
もともとは、ユニクロの幹部社員教育のために作られた門外不出の本と言われている。それを、社員教育にとらわれず、社会のためにオープンにすることを決断して書かれた本である。
題名の通り、これはノートである。ノートのように、感じたことや大事だと思ったことを書き込むことができる。ファーストリテイリングでは、従業員全員が経営者目線を求められている。本書は、ユニクロの全店長に配布されているそうだ。
しかし、ファーストリテイリングに限らず、ビジネスマンなら誰しも「経営者目線」なくては成功できない。成功者で、目先の仕事をこなしているだけの人などいない。成功者に共通しているのは、高い視座、経営者目線を持っているということだ。
今いる会社で今年も頑張ろうという方も、新しい舞台で心機一転頑張りたいという方も、若いうちから本書で説かれているスタンスを自分のものにできるととても良いと思う。
編集後記
皆さんがこれらの本を読んで、キャリアに関する思索を深めてくださったら、望外の喜びである。
なお、本を読んでインプットした内容や、それをきっかけに考えたキャリアプランは、実現しなければ意味がない。そのための第一歩としてお勧めなのは、ヘッドハンターや優秀な転職エージェントと会い、自分の考え方をぶつけてみることである。
ビズリーチには、日本を代表するヘッドハンターが多数登録しており、あなたのレジュメを見てスカウトをしてくれる。登録すれば、予想以上の数のスカウトを獲得することができるはずだ。それをご縁にヘッドハンターに出会い、人生の棚卸しをしてみるのも良いだろう。
また、JACリクルートメントは、大手人材会社の中でも、エージェントの能力の高さに強みを持つ人材紹介会社だ。特に、クロスボーダー案件に強みを持っているので、グローバルなキャリアを歩みたいと考えている方には、相談相手としてうってつけだろう。
まずはビズリーチに登録しながら、場合によってはJACリクルートメントなどのエージェントを並行して利用するのが良い。
今日は以上だ。