公認会計士の様々なキャリアパスについて調べた。
今回は、土木技術者から公認会計士となり監査法人に勤務し、コンサル会社、ベンチャー企業の管理部長を経て、現在は事業会社のM&A部門の部長をつとめているAさんにインタビューさせていただいた。
公認会計士へのキャリア、また公認会計士が今後どのように生き残っていけばよいか参考にしてほしい。
- 中身の濃い経歴が武器になる
- 閉鎖的な環境から公認会計士になることを決意
- 監査法人の業務は単調でつまらなかった
- 高給のキャリアパスを目指してコンサルへの転職
- 事業の主体者側になりたくて、事業会社への転職
- 転職の進め方
- 新卒公認会計士へは、世間ずれしないようになってほしい
- 会計士の資格と別の武器が1つ必要
- 編集後記:
中身の濃い経歴が武器になる
- これまでの経歴を教えていただけますか?
理系だったため、学部を卒業後、土木技術者として日本道路公団(現NEXCO)に入社しました。大学で土木工学を学んでいたため、周りの人たちと同じように専門性を活かした就職になります。
その後、働きながら勉強をして、公認会計士の試験に合格しました。監査法人トーマツ(現有限監査法人トーマツ)に入所し会計監査業務に従事した後、コンサルティング会社に転職し、M&A、企業再生、事業承継等に関する業務に従事しました。
その後、IPOを目指すベンチャー企業で管理部長を務めた後、現在は事業会社のM&A担当部長として日々努力中です。
閉鎖的な環境から公認会計士になることを決意
- 土木技術者から公認会計士へなろうと思った理由は何だったのでしょうか?
当時の日本道路公団は、昭和時代の日本企業の典型のような組織で、年功序列制度、終身雇用制度があり、福利厚生が手厚い一方で、遅くまで残業する者が評価され、寮や社宅に戻ってもノミニケーションが続く家族主義の職場でした。
これが良いか悪いかの議論は別にして、道路公団の民営化の話が出始めたことを契機に、自分自身の価値を考えるようになりましたね。
自分が担当している業務を見直して、道路公団以外の社会で役に立つスキルや経験は何があるのだろうかと考え直しました。
更に当時は20代半ばで担当業務の幅が狭いため、ノミニケーションの場で、先輩や役職者に、業務内容や社会で生き残れるスキルについて質問を浴びせることもして、情報収集にも努めました。
その結果、今経験しているスキルのほとんどは、道路公団以外では評価されないことを理解しましたね。さらにショックだったのが、諸先輩方も道路公団以外の世界はほとんど何も知らないという点でしたね。
このように道路公団の特殊性や閉鎖性というものを知るにつれ、将来について急激に不安になるとともに、独立も可能な資格を身につけておかないと、今後の日本で生き残っていくには不安だと考えるようになりましたね。
数ある資格を調べた結果、理系がバックグラウンドであることもあり、数字を扱う公認会計士を目指す決意をしました。
監査法人の業務は単調でつまらなかった
- 実際に公認会計士(補)になってみてギャップはありましたか?
最初に感じたこととして、すべての資格と同じく、会計士試験に受かっただけではその業界へのエントリーチケットを得たのみで、知識、経験及び人脈のすべてが足りないってこと。
したがって、道路公団を辞める時の目標である、「会社に依存しなくても社会的バリューのある個人になる」には程遠いスペックってことでしたね。
会計監査については、道路公団時代に会計監査院の監査を受けたことがあったので、イメージとの大きな乖離はなく、抵抗なく溶け込めました。
また会計士という資格を持っておけば、今後別のキャリアに挑戦して失敗したとしても戻れる場所があるので、生活に窮することはないという安心感を得られたことは財産でした。
これに対し、監査法人に対する感想は……社会人経験がある人間からの視点では、かなり残念な印象でした。
まず、多くの監査法人勤務者が口にする通り、業務内容が非常に単調であるとともに、監査法人後のキャリアに活かし難い事ですね。
次に、監査の厳格化がうたわれるようになった関係上、クライアントの交際関係がドライになり、外部との人脈形成が非常に難しくなってきた点ですね。
最後に監査法人にいる会計士の質の問題。会計監査という非常に限定的な業務を限定的な人間関係の中で行っているため、人間的に同質化していて、能力や経験に差がない感じでしたよ。
高給のキャリアパスを目指してコンサルへの転職
- 監査法人からコンサル会社に転職した理由はなんでしょうか?
一つ目は、「会社に依存しなくても社会的バリューのある個人になる」という目的を全く達成できないと感じたからです。
上述の通り、業務も人間関係も非常に限定される世界だったので、道路公団時代と大差を感じられず、これでは在籍する意味が無いというのが大きいですかね。
二つ目として、4年強の在籍により会計監査は一通り経験できており、あとは同じことの繰り返しになるため、新たな経験は激減することが見えていたこと。
三つ目は、監査法人からコンサル会社に移りM&Aを中心にスキルを身につけ、その後投資銀行に行って高給取りになるというキャリアパスを描いていたため、このキャリアパスを逆算して動き出したことが理由です。
最後に、監査業務のつまらなさと、在籍している人間の知識や経験の狭さですね。
- 監査業務からコンサルティングの業務になって、これまでの知識を活かせる部分と、生かせない部分はどのようなものがありましたか?
財務コンサルは、税理士や社労士と一緒に働くことが多いですが、当然それぞれの専門領域が異なるので、監査法人の業務でかかわってきた領域、つまり会計、会社法および内部統制の知識に関しては強みとなりました。
これに対して決定的に足りないと感じた知識は、税務についてですね。
上場会社も含めて、会社は、現金に直結する税務の方が会計より重要視する傾向にあるので、税務面でも会社のニーズにこたえる必要があったものの、転職直後は全く期待に応えられなくて苦労しました。
当時は仕事後にカフェに寄って、税務の勉強をするのが日課でした。
事業の主体者側になりたくて、事業会社への転職
- コンサルを経て事業会社に転職したきっかけは何でしょうか?
監査法人とコンサルは、ともに会社に対して口出しするものの、自分が主体でないから最終的な責任を持たない点で共通する。むしろ責任を被らないようにする事や、手離れ良く稼ぐことに集中するほうが重要だったりするんですよ。
このため、提案した内容の業務が、最終的にどうなったのか知らないことも多くあって、この点がだんだん不満になり、自分が主体の立場になりたいとの気持ちが強く芽生えるようになりましたね。
それで、事業会社に行こうと決意するにいたりましたね。
また、もともと投資銀行に行きたいと思っていたものの、リーマンショックによる投資銀行のリストラの現状を見たことと、業務内容はコンサルと同じく、如何に手離れ良く効率的に稼ぐかが重要視されることを理解するにつれ、興味が無くなったことも理由の一つですね。
- 事業会社への転職はどのような経緯で行いましたか?
IPOを目指すベンチャー企業に転職を決めたものの、いざ中に入るとすぐにコンプライアンス上の問題が見つかって、それがとても直すことのできない内容のものであったので、このまま残ることは自分にとって得策ではないと判断し、すぐに再度転職することを決意しました。
その時使用した転職サイトは後述するビズリーチで、このほかに過去に一緒に仕事したことのある人の紹介などにも頼りました。
- 事業会社で働くうえで公認会計士としてのキャリアが生きる部分/生きない部分はどのような点がありますか?
会計士としてのスキルが活きる点は、数字から会社状態を分析でき、問題点を把握できることにあるでしょう。
これはコンサル、事業会社、M&Aブティック、金融系のどこでも共通する点で、数字とビジネスモデルから会社の強み・弱み、やってきたこと、今後予測される打ち手が読めることでしょうね。
換言すると、これが出来ないと全く会計士は役立たずになるでしょう。
逆に生きない部分は前述の表と裏になる話で、会計士は基本的に一つの領域を掘り下げるスペシャリストに該当する。でも事業会社ではポジションが上がるにつれ、全体を見てリソースを配分するようなゼネラリストの能力が求められる。
監査を含む専門領域特化型の業務ばかりを経た会計士は、ここが出来ずに苦しむことになるのではないかな。もっともこれは会計士に限らず、弁護士、税理士などの士業すべてに当てはまることですが。
そしてもう一つ。これは特に監査法人に残った会計士に顕著ですが、人間関係が監査法人のみになっている人が多いから、人脈も、知識、経験などのどれをとってもほぼおなじで、残念に感じることがありますね。
転職の進め方
- 転職は転職サイトや紹介やどのような経緯でおこないましたか?
その当時からビズリーチ が成長著しいサイトで、色々なところで広告を目にするため、否が応でも記憶に刷り込まれていました。
年収1千万円の案件を紹介するというブランディングとこちらの求職の条件も合うので、ここに登録してみました。
率直に言えば、ビズリーチの広告宣伝力に完敗したわけです。
ひとたびビズリーチに登録すると、かなりの数のエージェントが相当な案件を紹介してくれるので、就職先を探す立場からしてもビズリーチは効率がいいという印象がありますね。
しかしビズリーチに乗っている求人内容は、1千万円に満たない案件も多くあって、虚偽表示感もありましたが(笑)
新卒公認会計士へは、世間ずれしないようになってほしい
- 同期には新卒で公認会計士になる人もいると思いますが、彼らに対してはどのような思いをもっていますか?
新卒で会計士になるためには、大学生の頃から会計士試験の勉強をしていたことになるので、大学でも勉強し続けてえらいと思う反面、人生で最も自由を満喫できる時間にできることをしなかったのはもったいないと思いますね。
また監査法人に入ると22歳であってもクライアントから「先生」扱いされ、また会計監査というニッチな仕事しかしていないので、世間から相当ずれた人間になっていることに気が付いていないことが多いです。これは心に留めておく必要があるでしょうね。
会計士の資格と別の武器が1つ必要
- 公認会計士で別のキャリアも検討している方に何かメッセージはありますか?
公認会計士試験に合格し監査法人に入っただけの経歴では、まだまだ社会的にバリューのある人間からは程遠いというのが現実です。
その経歴に少なくとももう一つ武器となる得意分野を身につけないとならない。税務、経理、コーポレートファイナンス、IPOおよび起業などからどの領域を武器として選んだのかにより、その後の仕事内容の方向性が決まると思います。
したがって、目指す姿から逆算して、次のキャリアを考えることがいいでしょうね。
-ありがとうございました。
編集後記:
いかがだっただろうか。
今回は、土木技術者から公認会計士、コンサルを経て、事業会社に転職したAさんへのインタビューを行った。
前のキャリアが後のキャリアに役立つことが多くあるということを分かってもらえただろうか。
多様な経験をして、充実したキャリアパスを実現してほしい。
転職の際には、Aさんも登録していたビズリーチに、ぜひ登録してほしい。
また、会計士専門の転職サービスとして、マイナビ会計士もおすすめだ。
豊富な求人バリエーションと確かな転職コンサルティングで、会計士の転職をサポートしてくれる。
今日は以上だ。