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「日本は高齢化社会の成功モデルを作るところ」外資系食品メーカーのマーケターへインタビュー

外資系メーカーは新卒、中途を問わず人気のある業界である。今回は、外資系食品メーカーで新卒から活躍する方に取材を実施した。特に飲食に関わる領域の製品に関してのマスマーケティングやECの考え方について深く迫った。

どのような背景で入社を決めたのか

-ご経歴を教えてください。

大学を卒業後、新卒で外資系メーカーのマーケティング職として入社し、数年間にわたってブランド戦略の立案やEC戦略の立案、実行に携わっています。


⁻なぜ外資系の食品メーカーに入社したのでしょうか。

外資系だからとか、食品メーカーだからという理由で選んだわけではなく、マーケティングの職種別採用があったから入社しました。

マーケティング部門は、意思決定者で、自分から発信できる機会が多いと思っていたので、マーケターになりたいと考えていました。職種別採用をしているのはほとんど外資系でしたね。

 

-意思決定という点では、入社後もイメージ通りでしたか。

そうですね。意思決定に携わり、周りを巻き込む機会が多くあります。

マーケティング部門の仕事では、広告代理店や社内のサプライチェーンや営業を巻き込んで、考えた戦略を実行するところまで体験できます。

広告代理店を悪く言うわけではないですが、電通の仕事は、言われたことをやっているので、意思決定に携わっているという様子はあまり受けません。

指示をして巻き込む機会があったので目論見通りだったなと振り返って思います。

外資系メーカーのマーケターとしての仕事内容

-仕事内容について具体的に伺いたいと思います。仕事内容について可能な範囲で教えていただけますか。

現在の仕事は、マーケティングのなかでもE-commerceの担当をしています。Amazonやロハコといったピュアプレイヤー(店舗をもたない業者のこと)の中で売上をどう伸ばすかというセールスプランニングの仕事をしています。商品は、菓子類や飲料と多岐にわたっています。

社内で固めたブランディング方針に基づいて、EC市場でどう売っていくか,
アクションプランを考えていきます。

 

-消費財領域はECの比率は低く、あまり仕事のインパクトが大きそうには思わないですがいかがでしょうか。

食品業界はマイナス成長なので市場は小さくなっています。食品メーカーほとんどすべてのトレンドでそうなっています。数多くない成長している領域が通販事業(EC)です。

小さいながらも今後伸びていくので重要な位置づけです。現在売上に占めるECの比率は5%程度ですが、数年のうちに20%程度まで伸ばすという目標があります。

どうしても小売店での販売だと昨対割れすることがあるなかで、ECの成長は無視することはできません。

 

⁻具体的にECのなかで、どう売上を伸ばしていくのでしょうか。

Amazonでどう売上を伸ばすかという話も大きな課題となります。メーカーのEC担当者は常に変化するAmazonのゲームルールに対応しなければいけません。

変化に柔軟に対応できなければ、Amazonによって損させられることすらあります。

EC業界におけるAmazonの影響

⁻どういうことでしょうか。

Amazonが様々なセール企画を考えています。メーカーは企画にエントリーして、Amazonのセールにのっかります。

その企画のなかに、価格やAmazonの取り分をコントロールされて、Amazonだけ儲けて、メーカーは値下げ分を全部負担し、メーカーが損してしまうことがあります。

利益ではなく売上を作るのに必死なのか、Amazonの思うがままになっているメーカーがあります。すべての企画にのるのではなく、売り上げと利益の観点から最大公約数を得られるように調整し、あえて企画にのっからないこともしています。

 

-Amazonの販売において他に考えるべきことはあるのでしょうか。

AmazonはAmazon社による販売と、マーケットプレイスによる販売の2種類があります。マーケットプレイスはAmazonに売上の一定比率をとられますが、価格を出店者側でコントロールできます。

全部Amazonに販売させるのではなく、メーカーがマーケットプレイス出店をして浮くプロアクティブな活動も今後出てくると考えています。

マーケットプレイスといってもAmazon依存は変わらないので、自社通販での売り上げを確立していくことも大きな課題と考えています。

とはいえ、Amazonの資産をうまく活用しないと乗り切れない問題に直面している実態があります。

Amazonの優れている点

-どういったところでしょうか。

俗に言う、配送クライシスです。Amazonは配送システムが発達しており、協業できる部分があります。直近で配送業者の値上げが著しく、自社通販でやると利益を圧迫するケースがあります。

利益率が低いけど、重たいものはAmazonの配送資産を活用することで、自社製品を低コストで消費者に届けることができます。

-メーカーのECビジネスに関してはやはりAmazonの存在が大きいですね。

Amazonは各お客さんの取引額のトップ10に入っていこうとしています。これまで、各メーカーの取引上位は小売店が占めていましたがAmazonが食い込んでくることによって、Amazonの影響力を強めようとしています。

Amazonをいかに活用するかが大切

 -Amazonのルールを解析していくのがECの仕事になりそうですね。

そうですね。世の中のメーカーのEC担当者でEC、特にAmazonの原理原則を抑えている人は少ないです。Amazonがいいよね~と、ただAmazonに頼っていると危険です。

現在、採用したい人材としても、小さい企業でもEC担当者として、結果を出していた人が求められています。

 

-具体的にどういう人が採用されているのでしょうか。

地方の小さい着物販売店で数十万円の予算でECを担っていた人などが採用されて、とても重宝されています。

大企業のEC担当を経て転職されて来た方より、中小企業でECを担当していた人のほうが、予算が限られている中でPDCAを回して有用なスキルを身につけている印象です。

Amazonの広告ビジネス

-Amazonは最近広告ビジネスにも力を入れていると聞きました。

GoogleやYahoo!のリスティング広告は割合が減り、Amazonへの広告に代替されています。AMSと呼ばれる、Amazon内に広告を出して、消費者により注目されて買ってもらうために広告費を使っています。

すでにアメリカでは、物を買う際に、Googleで検索して買うのではなくAmazon内で検索する人が半数以上になっていると言われています。

例えば、バッグを買おうと思いどのバッグを買おうか考える時に、Googleでバッグと検索するのではなく、Amazonで「バッグ」という言葉で検索して、検索結果から比較して買う流れになっています。そうなると広告で上位表示させることは重要です。

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ECにおける販売戦略

-ECにおいて定期購買ビジネスが重要な戦略とよく聞きます。

消費財はブランドスイッチが頻繁に起こるので、既存の定期便のお客さんを大事にして、ブランドへのロイヤルティを高めていくことは重要と考えています。単純に値段だけ比較されると、小売店で販売されているプライベートブランドにスイッチされる可能性がありますから。ローコストで、ロイヤリティを高めていくことは意識しています。

 

-販売戦略を考えるうえで、活躍している人はどのような人でしょうか。

ストーリーを作ることができる人でしょうか。

販売したい商品があって、こういう方針で売りたいですというストーリーをもっていることが重要です。また、作ったストーリーにあわせて数字でロジックを組み立てることができることも重要です。

ストーリーは誰にでも通じて、簡易的で、わかりやすくないといけません。外資系では外国人も承認プロセスにかかわるので、日本の文化的背景を十分に共有できていない外国人にもわかるストーリーを作らないといけません。そしてそのストーリーに数字で説得力をもたせると外国人の偉い人にも納得もらえるのです。

 

-数字がきちんと入ったストーリーをうまく作れるのはどういう人でしょうか。

私の周りを見ると3つのポイントがあります。

まず、漫画好きな人です。簡単なストーリーをつくるうえで、漫画の面白いストーリーを参考にしている人のストーリーは分かりやすいです。

次に、公文通っていた人です。公文でなくても算数の塾や、数字にかなり強い人は、ラフな数字まで作ることができています。周りで数字に強い人は公文に通っていましたね(笑)

最後に、結婚していて、子供がいる人です。

簡単にものごとを伝える能力が仕事で求められます。子供がいる人は、子供にわかりやすく伝えるようにコミュニケーションをしているので、簡単にわかりやすく伝える能力に長けています。

ストーリーを描けるかが大切

-だいぶ、主観的な意見に感じましたが、かなり具体的で参考になります。「ストーリー」というのをより具体的に説明していただけますか。

消費者を主人公として、買うまでの話を超具体的に描くことです。

例えば対象顧客を主婦と定義して販売計画をプランする際に、もし俺が主婦だったら~ということを口癖にして当事者意識をもってストーリーを次々に作れる人が優秀です。

 

-主婦目線になるためにその方はよくどういう訓練をしているのでしょうか。

個人的には、プライベートによるところが大きいと思います。子供がいて、家族がいる人が結果的に様々な観点から物事を見れるマーケターとして成功している気がします。

これも偏見かもしれませんが、離婚している人にいいマーケターがいないと思います。

外資系として苦労する点

-外資系ということですが本国はどの程度介入してくるのでしょうか。

ロゴの悪用がないかくらいですね。

介入は少ないです。なぜかというと、日本が高齢化社会だからトライアルモデルとして本国から実験国として考えられています。既存の観点でおしつぶすのではなく、高齢化社会の成功モデルを作ることが求められています。そのため、本国から口出しはありません。

 

-仕事で苦労する点は何でしょうか。

苦労する点はオペレーションですね。予算の管理から、お客さんにおくるメールの配信設定、文面作成、電通に対してのブリーフと細かい点を含めあらゆるものを担当します。

電通との仕事についても、予算を出して、とりあえず何かプランを出してというやり方ではなく、細かく指示をするものを書かないといけません。日本企業だと、電通等の代理点に大枠をまかせ何か出してというブリーフをすることが多いと聞きます。

外資系の転職事情

-外資なので流動性も高いように感じますが、どのようなところへ転職していくのでしょうか。また、貴社に日系企業から転職してくる方もいらっしゃいますか。

マーケティングの部署は転職していく人は多くはいないです。ただ、20代の若い子はどんどん辞めています。

転職してくる人に関しては、様々な業種から来ています。同業のメーカーや、PR会社、玩具系メーカー、また、TVショッピング会社から転職してきている人もいました。転職してくる人は専門スキルをもっているので総じて優秀で、定着率もよいです。

ある程度経験してきて30歳を超えるあたりで転職してくる人が多いでしょうか。また女性の比率の方が高いです。

 

-外資系の中途は、コンサルやメーカーをはじめ脱落者が多い印象です。中途で活躍している人が多いのは意外ですね。

私が担当しているECのチームの話をすると、採用方法を変えています。先程、着物の小さい会社から転職してきたという話がありましたが、会社の大小を問わず、無名の企業でもスキルがあれば転職者を受け入れていくようになりました。スキルが身についている人は活躍できています。

外資系メーカーの給料事情

-具体的に給料はどのくらいのスピードで上がるか伺いたいです。コンサルや投資銀行よりは低い印象ですが具体的にどれくらいでしょうか。

600万円~900万円がマネージャー未満のポジションです。マネージャークラスになると1100万円以上になります。マネージャーは早くて入社10年くらいで昇進です。昇進のベースは緩やかですね。

転職者はマネージャーで20代はいないですし、30代でマネージャーとして入ってきます。

転職者は途中からマネージャーに昇進する機会は生え抜きよりも少なく感じるので、入社時にマネージャークラスの座を確約されてから入ってきたほうが得策かなと思います。

 

-ありがとうございました。

編集後記:

今回は外資系メーカーで新卒から活躍する方にお話を伺った。Amazonの影響力を感じる内容で興味深かった。メーカーはECを避けては通れないので、Amazonをはじめ、ユーザーが集まるECプラットフォームをどう制すかは重要である。

外資系メーカーをはじめ、裁量をもち事業会社でチャレンジする機会をぜひ探してほしい。事業会社は、ビズリーチに登録して機会を探ってほしい。必ずおすすめの会社が探せるはずだ。

また、コンサルティング業界への転職であれば、アクシスコンサルティング、EC系ベンチャーをはじめ裁量の大きい会社はGEEKLYがおすすめである。

今日は以上だ。