GRITというやりぬく力に注目が集まっている。2013年のTED talksでAngela Lee Duckworth教授が話をして話題になった。そのGRITについて書いた著書について紹介する。
- GRITになぜ注目していなかったか
- 筆者
- GRITが大切にされている理由
- 才能があるのに成功できない人
- 人間が生むバイアス
- 努力によってはじめて才能はスキルになる
- やり抜く力がないとは
- ジェフ・べゾスの親から学ぶ子育て
- 本書で得られること
GRITになぜ注目していなかったか
GRITはやりぬく力と書かれているが、やりぬく力というのはどうも自己啓発っぽくてよく調べることもなく敬遠していた。昨年、「やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける」という本が出版されたがこちらもあまり読んでいなかった。
意志力の類はあまり現実的ではなく、なんとなくやる気を出させる本がまん延している。啓発本の類だが、よく売れている夢をかなえるゾウはおすすめの本なので啓発本嫌いでなければ読んでほしい。
筆者
筆者はアンジェラ ダックワースというペンシルベニア大学で心理学を研究している教授だ。アンジェラ氏の両親が中国からの移民であるため、American Born Chineseだ。話がそれるが、中華系の移民はアカデミック界隈でも活躍しており、中国国内の研究の底上げにも貢献している。
筆者のアンジェラ氏は、ハーバード大学卒業であるが、親からは天才だとは言われず、普通の子だといわれ育ってきた。このことは後のアンジェラ氏の思考の形成に(ややネガティブな意味で)影響している。
マッキンゼーやオックスフォード大学、ペンシルベニア大学を経て、教授になっている。実はハーバード大学卒業後は教育関連のNPO設立や公立中学の教師にもなっている。
優秀な人がTeach For AmericaをはじめとするNPOに就職するとメディアでは言っているが実際にこのような事例があるのだと感心した。いっぽう、超エリートコースの人は基本的にコンサルや投資銀行、法科大学院、メディカルスクールに行くためアンジェラ氏のような事例はやはり稀といえる。
その後、2013年にマッカーサー賞を受賞した。マッカーサー賞は超がつく一流研究者しかもらえない賞である。肝心の本の内容に入る。
GRITが大切にされている理由
米国陸軍士官学校は、全米の心身ともに優れた一流の学生が入学してくるにもかかわらず一定数が退学してしまう。
とてつもない難しい選考をくぐりぬけたにも関わらずだ。そこでどういった学生が生き残るかを調べた結果、入試の成績ではなく、やり抜く力、つまりGRITがないと生き残れないことが分かった。
そしてこのGRITは成績に比例しない、これまでの指標と相関係数のないものであったわけだ。中退問題について多くの人が調べてきたがなかなか結果がでなかった。
ダックワース教授はあきらめない力が重要だということをつきとめた。困難に立ち向かい、失敗した後に、再起する、努力を継続する力が最も大切だと見抜いた。
情熱をもち、そしてその情熱を持ち続けたままがんばり続けることができる人こそがGRIT力のある人だ。
重要な課題を克服するために、挫折を乗り越えた経験や、いちど始めたことを必ずやり遂げることがどうかが成功するために大事ということが書かれている。
才能があるのに成功できない人
才能があるが、成功をしない人がいる。そしてこの才能がある人たちは、継続してやりぬく力、GRITがないがゆえに成功をしない。そして、才能とGRITには相関関係がないことがわかっている。
才能があってGRITがある人が最も成功する人といえよう。遺伝子学に関する本を読んでいると後天的な努力によって獲得できる能力は限られているため実は努力することは意味がないのではないかという学説もある。
しかし、本書では実験結果がわかりやすく示されており、しっかりと努力をし続けることで成功することが分かったとある。
呑み込みが悪いにもかかわらず成績がいい学生がいる。彼らは継続的に学習することをあきらめずわからないことを恐れず質問をすることで成果がでている。
人間が生むバイアス
同じ結果、同じような技量がある人でも努力をせずにそこに至った天才を人間が評価しがちであると指摘している。確かに、努力をしていない天才を賛美する傾向にあり、地味に努力を積み重ねた人にはなかなかスポットライトがあたらない。
人間自身が努力をすることを否定していたのだ。
またマッキンゼーの面接官を喜ばせる単純な方法という部分が面白かった。ネタバレになってしまってはおもしろくないので、詳細は書かないがケース面接における最初の入り方についていいアドバイスが書かれていた。
ケース面接は私自身も何度も、自分も受けたし、面接する側でも体験したが、筆者のように答える人は見たことがなかった。答え方は様々あるので固定観念にとらわれないようにしていきたいと感じた。
エンロン事件に関しても、長期的な継続的成長を妨げたことが破綻した理由と分析してあった。短期的なスプリントでなく、長期的なマラソンをしようというのが筆者の一貫した主張であることがうかがえる。
努力によってはじめて才能はスキルになる
非常に良い言葉だと感じた。才能は才能単体では何も役に立たないわけだ。それをスキルに昇華させてはじめてスキルが役に立つ。そんな当たり前なことに気付かされた。
また、世代ごと、年齢ごとにやり抜く力が違うこともしめされている。今回の示されているものでは年齢が高いほどやり抜く力が強いことになっている。
やり抜く力がないとは
やり抜く力がないとは最上位の目標がないことだといわれている。何かをするときに、その作業が何のためにしているのかがわからない状態でやっていると失敗をするということだ。
通常、何も考えずに打ち込むことは楽だが、それで得られるものは少なく、必ず目的をもった行動をとらないといけない。
目指す方向が複数見えてしまったらそこに向かって同時にすすみたがるがそれはダメで一つの方向にだけ向かって正しい努力をしなければいけない。
また、有名な漫画家ですら90%はボツになっており、あきらめずに書き続けることが大事だと言われている。
そのためDreams Come Trueの何度でもという曲に1万回ダメで望みなくなっても、1万1回目には何か変わるかもしれないというのはあながち間違っていないのかもしれない。
それでも同じことを繰り返し続けるには動機の持続性が必要であるため、ずっとやり続けるための動機付けもしっかりしておかないといけないと感じた。
ジェフ・べゾスの親から学ぶ子育て
Amazonの創業者であり21世紀において傑出したCEOの一人であることに間違いないジェフ・ベゾスの話も興味深かった。
ジェフの母親は17歳のときにジェフを生んだ。それ自体も驚きだが、子育ても興味の赴くままに育ててあげて、何でも話しを聞いてあげのぞむようにしてあげ、時に正しい方向に導いたことで、素晴らしい起業家になった。
家庭でモンテッソーリ教育に近いことを実践しているのだなと感じた。
本書で得られること
これまでの文章を読むと当たり前のことしか書いていないと思うが、当たり前のことを根拠をもって書いていたので当たり前のことを自分が受け言えれることができ、安っぽい言葉でいうともっとがんばれる気がした。
いずれにしろGRITは大事な力なので継続して鍛えていってほしい。ぜひ興味のある方には読んでいただきたい。3時間ほど集中してあっという間に読み終えた。
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
- 作者: アンジェラ・ダックワース,神崎朗子
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/09/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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こちらは読んでいないのでこれから読もうと思う。
今日は以上だ。