近年IT産業は市場の成長とともに中途を中心とした人材採用が拡大を見せ空前の人手不足となっている。特にITコンサルタントの職種は地位および給与の高まりを見せている。今回は、ITコンサルタントから大手外資系コンサルティングファームに転職した方に取材を実施した。
- 新卒でITコンサルに入社、開発を担当するまでに
- 新卒学生の採用基準は3つ
- ITコンサルはワークライフバランスがとりにくい
- 転職活動はエージェントを利用
- 開発とマネジメント両方の経験があるプログラマーは需要あり
- ITコンサルなら転職活動はするべき
- 編集後記:
新卒でITコンサルに入社、開発を担当するまでに
-自己紹介をお願いします。
理系の大学院を修了後、独立系のITコンサルティングファームに入社しました。現在は転職して会計系(旧Big4)のコンサルティングファームでコンサルタントとして勤務しています。
よく質問されますが、学生時代は授業で簡単なプログラミングに触れたことがあるくらいです。
-なぜ新卒でITコンサルタントとしてのキャリアを歩みはじめたのでしょうか。
最初は戦略コンサルタントや経営コンサルタントになりたいと思っていたのですが、色々考えた結果、ファーストキャリアでITに関するベースを経験しておいた方が、自分のキャリア形成に対して時代の流れ的にも良いと感じたからです。
実際に開発経験が有るのと無いのでは、戦略・経営コンサルタントで顧客に提供できるコンサルティングの品質が大きく違ってくると思ったからですかね。
-入社後はどのような仕事をしていたのでしょうか。
4月~7月までは、研修期間でした。研修内容は一般的なビジネス研修の他にIT研修・金融研修でした。ITの研修では、1人で1つのシステムを作りきるという課題でした。言語はjavaで学生時代にはあまり触れた事がなかったので、必死に取り組みましたね。
金融は投資銀行のディーラーが受ける研修と同じ内容のもので、基本的な金融の考え方からデリバティブのプライシングまで内容の濃いものでした。実際のディーリング業務の研修もありましたね。
配属後の最初のプロジェクトは、FXの新規取引チャネルの導入プロジェクトに開発者としてアサインされました。テクニカル指標の開発や、性能テストの計画から実施まで幅広い仕事をしました。大変でしたが今、振り返ってみると良い経験でした。
2年目以降は、実際に自分でコーディングするというよりは、主に要件定義やプロジェクトマネジメントをする上流の仕事にシフトしていきました。
-1年目はコーディングの仕事も多くJavaのスキルは求められるでしょう。どのようにプログラミングスキルを伸ばしたのでしょうか。
よく質問されますが、書くしかないですね。Javaは練習したらできるようになりますが、苦手意識がないことが重要です。
IT全般に苦手意識があるとプログラミングの学習を阻害してしまいますので。
採用活動にもたまに携わっていましたが、ITに苦手意識がないことが前提条件でした。
新卒学生の採用基準は3つ
-採用活動もしていたのですね。採用の話になりますが、新卒の学生はどのような基準で見ていたのですか。
特別な基準ではなく、おそらく他の会社にも共通している観点ではあると思うのですが、主に次の3点を見てました。
まずは努力できるかどうかです。
目標を設定して、それを達成する為の努力が出来るかどうかはビジネスパーソンとして重要なスキルですね。「学生時代に頑張ってきたことはなんですか?」とかよくある質問はこの観点で確認する為に聞いています。
次に論理的思考力や思考の柔軟性があるかどうかです。
論理的思考力とは、前提条件が与えられている状態で、正しく破綻なく論理を積んで思考を進めていく力を指します。
思考の柔軟性とは、固定概念や前提条件そのものを疑う力、あるいは自分で思考のスタート地点である前提条件を設定する力を指します。
どちらの思考スキルもコンサルティングやシステム開発には重要なスキルです。
面接の会話の中でも、筆記試験やグループワークでもこの基準は観点としてありますね。
最後に、素直さです。先輩からの指摘に柔軟に対応し、学ぶための素直さがなければ、成長できません。勘違いしないで欲しいのは、Yesマン的な素直さではないです。
この3点がわかるように面接を進めたので志望動機等は聞いていませんでした。優秀な学生を採用するのに、現地点での志望度は関係ありませんので、面接官自身が優秀であることを伝えることは常日頃考えていました。
特に海外大学の学生が相手のときは見られている意識が強かったです。
-海外大学の学生も多く受けに来たのでしょうか。
最近はボストンキャリアフォーラムやロンドンキャリアフォーラムのような海外イベントにも出展しているので、そのフォーラムの場で受けてくれる学生の方は多いですね。
ITコンサルはワークライフバランスがとりにくい
-ITコンサルに関しては以前取材を実施しましたが、病気になる方も多いのでしょうか。
多いですよ。特に1,2年目で少し病んでしまう人はいます。他の事業会社やシステム会社よりは、若手社員に求める期待値が高いからだと思います。その分成長の機会もあるので、チャンスととらえれば楽しいですね。
-復帰はできるのでしょうか。
復帰する人もいますが、体調を崩すと療養期間に入り、別の会社に転職する人が多いです。2,3年働くと転職は容易ですしね。
優秀な人ほど仕事が降ってきて非常に優秀でも体調を崩して転職する人もいます。
私はなんとか乗り切って健康に過ごしています。
-労働時間は長いのですか。
長いですね。転職理由もワークライフバランスを求めていたからですし。大体平均で0時帰りでした。忙しいときは、ずっとタクシー帰りでした。単純に会社に人が足りていませんでした。
-プロジェクトマネジメントにおいてもプログラミングスキルは必須でしょうか。
必須ですね。マネジメントをするにしても開発者と同じ言語で会話ができるレベルのITやプログラミングの知識は必要ですし、なにかトラブルがあった際には、稼働しているシステムのログやデータの状態を調査しなければならないので、Java、SQL、LINUXは必須でしたね。
Javaやシステムを構成しているその他の開発言語は、書けなくても読む事の出来るレベルでは必要です。
あまり他のシステム会社のプロジェクトマネージャーやリーダーには求められないかもしれませんが、前職の会社では必須でしたね。
-会社を辞めていく人は、体調不良が多いのでしょうか。
体調が悪くなって辞める人と優秀だから出ていく人が半々でしょうか。どちらの人たちもアクセンチュアかデロイト、PwC、EYといった会計系のコンサルティングファーム、Fintech系の企業へ転職します。スキル的にすぐに採用されます。
たしか3年で3割ほど辞めていきました。4年経つ頃には半分もいなかったように思います。
-なぜ転職したのでしょうか。
より上流の仕事で様々な業界のコンサルティングがしたいというキャリアアップの理由と、給与アップやワークライフバランスの待遇面を求めての2点ですね。
-実際勤務されていた会社は何がきつかったのでしょうか。
深夜当番という形で障害が起きたら電話がかかってきます。家で寝ていても電話がかかってくると起きてすぐに対応しないといけません。その間の給与は出ません。週2日くらいは深夜当番でしたし、後輩が当番の日でも後輩が解決できなければ自分に電話がかかってきます。
家族も電話がかかって来ると起きるので非常に不機嫌になっていました。深夜対応に加えて週末のリリース作業もすることが度々あったため体力的にしんどかったです。
転職活動はエージェントを利用
-転職活動はどのように行いましたか。
ビズリーチに登録して転職エージェントと3,4人会いました。エージェント経由で外資系のコンサルティングファームにコンサルタントとして転職しましたね。
-転職の面接はどのくらいでしたか。
1日で内定が出ました。面接官と話した後、合格し、すぐにパートナーと会って簡単な職務経歴やオファー額の話をして内定をとりました。
システム開発を実際にやった事があって、プロジェクトマネジメント経験が豊富な20代は不足していると思いますのですぐに採用されるでしょう。
-転職エージェントに会っていかがでしたか。
どの転職エージェントも紹介してくる企業は同じだったし、給与交渉もほとんど自分でやったのであまり意味はなかったと個人的には感じました。初めての転職なので何となく利用してみたという感じです。
今働いている会社はすぐ入社も決まりましたし、給与も高いと同業から転職した人から聞いていたので即決できました。
とにかくワークライフバランスを求めての転職活動でしたね。
開発とマネジメント両方の経験があるプログラマーは需要あり
-システム開発をしている人たちは世の中にたくさんいるので、いくら容易になったとはいえ採用の門戸は狭そうですが。
実際にコードを書いて開発したことがあって、要件定義といった上流にも携わり、マネジメントもできる、といったバックグラウンドのある人は案外いません。
どういう形でシステムが動いているか分からないのであれば、プロジェクトマネジメントとして足りない部分が出てきます。プログラマーとして最初に働いていたので良かったです。
-同じ独立系や日系への転職はなかったのでしょうか。
日本の大手ITベンダーで働いてる友達の話を聞くと、彼らの職場ではあまり働きたいとは思わなかったですね。
-それはなぜですか?
働いている人から聞いた話になりますが、基本的にベンダーコントロールが主な仕事なので、IT領域のことが分かっていない人が多いです。
また、本当かどうかわからないのですが、データ抽出作業を手動で1時間に1回やるといったような非効率な話を聞きました。誰かが自動化する仕組みを作ればいいのに、改善しないという企業文化は個人的には合わないと思ったからです。
-年収はどれくらいだったのでしょうか。
私が入社した時の初任給は400万スタートでした。今の新卒の人は500万円ですね。その後は評価に応じて50万円から100万円、毎年上がっていく感じです。
ITコンサルなら転職活動はするべき
-ITコンサルとしてずっと働いてきていかがでしたか。
成長のためなら頑張れよという雰囲気だったので、ドMが集まるような環境でした。実際、成長できて、スキルが身についたのでITコンサルタントとしてはどこでも転職できるようになりました。
-独立系のITコンサルティングファームで働いている人に何かメッセージはありますか。
ITコンサルタントとして優秀だったら、自分のマーケットバリューを確認する意味でも、本当に転職はしなくても転職活動はした方がいいと思います。
-ITコンサルタントとして活躍するにはどのようなメンタリティが必要でしょうか。
基本的に採用の基準にしている、3点の「努力できること」「論理的思考力・思考の柔軟性があること」「素直であること」があればある程度優秀な人材といえますが、継続的にパフォーマンスを出して活躍する為には、メンタルとフィジカルの強さが必要です。
-ITコンサルティング企業選びにあたって見ておくべき点はありますか。
ファーストキャリアとして選ぶとしたら、自社でコーディングをする企業がいいですね。
-ありがとうございました。
編集後記:
ファーストキャリアでITコンサルを選択肢、その後、大手外資系コンサルティングファームへ転職した方に取材を実施した。
示唆に富んだ内容で、大変参考になるものが多かったことだろう。ITコンサルを目指す方にとって、また現在ITコンサルタントの方にとっては具体的な内容で参考になったことだろう。
IT業界、コンサル業界でキャリアを考えている方は、ぜひビズリーチに登録して様々なキャリアチャンスをうかがってほしい。特にITの経験がエンジニアでもコンサルでもある方にとっては非常にチャンスな市場である。
また、Forkwell Scoutはエンジニア転職に非常におすすめなので、利用してほしい。登録するとスカウトがくるのでITに関わる仕事をしたことがある方は必ず利用しよう。
コンサルティング会社への転職ならばアクシスコンサルティングをおすすめしているので利用しよう。SEからコンサルへの転職支援実績が非常にある。
いずれにせよビズリーチは登録して損は絶対にない。今日は以上だ。