前編では、デロイトトーマツコンサルティングでの業務や会社の特徴について語っていただいた。
後編では、新規事業コンサルに転職後のキャリアについてインタビューをした。
ベンチャーや投資に興味がある人には、ぜひとも読んでいただきたい。
前編はこちら
- 現勤務先の新規事業開発コンサル会社の代表と知り合ってから転職に至るまで
- ポテンシャルを考慮してもらえる年齢と、パートナーを目指す気のなさから、転職に踏み切った
- 新規事業コンサルの価値の出し方は2通り
- 単価設定は低めだが案件をかけもちして売上をキープ
- 実際の経験や領域に関する知見を提供して付加価値を出す
- 大企業では新規事業とコア事業との距離感が難しい
- 企業の新規事業の成功例「Tokyo Prime」
- スタートアップと大企業の連携をサポートするのが新規事業コンサル
- 前職のコンサルでの経験は活かせる
- 編集後記:
現勤務先の新規事業開発コンサル会社の代表と知り合ってから転職に至るまで
-転職をした経緯もお願いできますか。
イベントを通して 、現勤務先の新規事業開発コンサル会社の代表と知り合い、1年ほど定期的に飲んでいました。
当初は転職ありきで会っていたわけでもなく、面白い仕事をしていて美味しいご飯屋さんに連れて行ってくれる程度の認識でした。
何度か飲みに行く中で、ある時、転職しないかという話になり、決意するにいたりました。
新規事業に関わりたかったことや、お互いの仕事への姿勢から、人間性まで、ある程度理解しあっていました。
そういう背景もあって、形式的な面接なしで今の会社からオファーを頂きました。
結果的に、今の勤務先に転職する際には、表立った転職活動はしていないです。
ポテンシャルを考慮してもらえる年齢と、パートナーを目指す気のなさから、転職に踏み切った
-マネージャーが見え始めていた頃だと思うのですが、そこにこだわらなかった理由があれば教えてください。
あくまで個人的見解ですが、ポテンシャルを考慮してもらえる状態で転職できるのが、ギリギリ20代だという印象をもっていました。
自分は新規事業に関しては、コンサル時代のプロジェクトとして一案件行っただけであり、新規事業の専門家ではありませんでした。
なので、あと2年タイミングを遅らせると採用されないかもしれないと考えました。
また、コンサルタントとして、マネージャーになることは視界に入ってはいたものの、マネージャーからさらに昇進してパートナーを目指す気はありませんでした。
こうした背景もあり、転職するなら早いほうが良いと考え、転職を決意しました。
新規事業コンサルの価値の出し方は2通り
-現職の新規事業コンサルについて伺いたいです。正直、新規事業コンサルは難しく、上手くいかないイメージです。コンサル側がどういった価値を出すのかを教えて頂きたいです。
新規事業コンサルを行う際に重要な観点は2つあります。
1つ目は、スタートアップのアプローチを企業の新規事業にどう取り込むかということです。
2つ目は、新規事業を生み出す文化を大企業に導入するための制度をどう作るかということです。
1つ目に関しては、スタートアップに関する知見が溜まっているので、事例と比較し、クライアントにアドバイスすることができます。
2つ目に関しては、バックグラウンドとして大きい事業会社で新規事業開発をやってきた人たちがいます。
その過去の経験や他社の事例を活かして、制度設計を支援することができます。
私個人が出すバリューとしては、新規事業は基本的に人が足りていないので、PMOの役割を担っています。
なおかつ、抜け漏れのあるタスクをひろって、上手くプロジェクトが回るよう動いています。
こういった部分は、前職のコンサルで培ったプロジェクト経験がそのまま生きるので、クライアントに貢献できていると考えています。
単価設定は低めだが案件をかけもちして売上をキープ
-クライアントが払う単価設定はどのようになっているのでしょうか。単価が高いイメージは湧きませんが。
新規事業は予算が少ないケースもあり、プロジェクト単価は前職の大手ファームと比較すると安いです。
ただ、個人で案件を複数かけもちすることで、1コンサルタントが稼ぐ売上はキープしています。
また、私個人としては、大企業の新規事業立ち上げ支援と、投資先スタートアップ支援を並行して担当しています。
大手コンサルティングファームと比較すると、高いオフィス賃料やバックオフィスコストがかかっていないため、固定費が下げられているという特徴もあります。
実際の経験や領域に関する知見を提供して付加価値を出す
-コンサルタントは、実際の新規事業の経験があるわけではないので、付加価値を出すのは難しいように思います。その辺りに関してはいかがでしょうか。
事業会社側も、必ずしも新規事業の経験が豊富な人が担当しているわけでもなく、経験がないので、我々に相談をしてきます。
弊社には新規事業開発や起業経験のあるメンバーも多く、そこで付加価値を出しているのではないでしょうか。
また、組織としては、サプライチェーン特化や、組織人事特化のように、領域特化型ファームを持っています。
その領域特化型ファームの新規事業版があるといったイメージを持っていただくとわかりやすいかと思います。
私個人は、直接の事業開発経験はありませんが、コンサルタントとして領域に関する知見はインプットし、専門家として価値を提供しています。
大企業では新規事業とコア事業との距離感が難しい
-新規事業を立ち上げる際の、スタートアップと大企業のロジックの違いはどういったところにあるのでしょうか。スタートアップのほうがイケているイメージはありますが。
大企業は、コア事業やアセットがある分、コア事業との距離感が新規事業立ち上げの難しさになっています。
既存のコア事業と近い方が、シナジーも生まれやすいと思いますが、既存のコア事業と近すぎると、コア事業部内でやればよいという意思決定になります。
一方で、新規事業案が既存の事業と離れすぎていると、「うちの会社がやる意味ある?」ということにもなりかねません。
バランスの取り方が難しいです。
企業の新規事業の成功例「Tokyo Prime」
-最近大企業が行った新規事業の成功例で、良いなと思ったものがあれば教えてください。
大企業というか微妙ですが、オープンイノベーションの事例として、日本交通×フリークアウトの新世代タクシー広告「Tokyo Prime」があります。
それぞれの強みをしっかり出せていて良いなと思いました。
スタートアップと大企業の連携をサポートするのが新規事業コンサル
-スタートアップが大企業と組みやすくなりつつありますが、スタートアップが大企業と組んでスケールしていくためには、どういった方法がメジャーなのでしょうか。
分かりやすいのはアクセラレーション(スタートアップを募集し、支援するプログラム)に出て、注目してもらうことだと思います。
ただ、その後が重要で、スタートアップ側は、業務提携や出資まで、大企業をしっかりと握ることが重要です。
それができないと、一時的に注目を集めるだけで、事業創造までたどり着けない印象があります。
大企業側としても、スタートアップと連携したいというニーズはあります。
どのような座組みでどのような事業提携につなげて行くのか、私たちがサポートできる部分はあると感じています。
また、最近はCVC(コーポレートベンチャーキャピタル:事業会社が自己資金によりベンチャーへ出資・投資すること)もトレンドの1つになっています。
なので、大企業の資本を入れてもらい、連携をしやすくする動きもありますね。
どの取り組みも単発では機能しません。
組織全体として実現したいことを明確化したうえで、ロードマップを描き、複数の取り組みを連携させながら進める必要があると感じています。
前職のコンサルでの経験は活かせる
-最後に、ポストコンサルキャリアを考えている方へ向けてメッセージをお願いします。
私は、新規事業立ち上げのコンサルタントになりましたが、前職のコンサル経験が活きることがたくさんあります。
期待値を超え続けること、ハードワーク、論理的な資料構成スキルはコンサルタントとして身につけやすい性質だと思います。
こういったメタスキルは、どこへ行っても戦えるスキルなので、ファーストキャリアとしてコンサルタントを選んで良かったと感じています。
もちろん、新規事業開発コンサルタントになってから新たに学ばないといけない部分もたくさんあります。
経験してみないと分からない部分もありますが、未経験のことを短期間でキャッチアップ出来ることもコンサルタントのスキルの1つだと思います。
そこに関してもコンサルの経験は活かせるかと思います。
-ありがとうございました。
編集後記:
新規事業コンサルの業務について迫った。
前編から、コンサルで身につくスキル、そして転職後に生かされたスキルについて語っていただくなかで、コンサルタントとしてどう生きていくかのヒントが得られたのではないだろうか。
新規事業やベンチャー領域に興味がある人の参考になったら幸いだ。
コンサルへの転職、またポストコンサルのキャリアについて興味がある人は、ビズリーチへの登録がおすすめだ。
コンサル出身者の転職エージェントも多く参考になる。
また、コンサル特化のエージェントとしてアクシスコンサルティングもおすすめしている。
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今日は以上だ。