以前、アクセンチュアの買収戦略についてまとめさせていただいた。アクセンチュアは多角化を推し進め様々な分野で買収を進める巨大な総合系ファームとして君臨している。その他のコンサルティングファームの状況について知りたいという声があったのでまとめさせていただいた。
- コンサルティング業界は再編期
- Big4系の会計系コンサルティングファームも大きく変化
- 買収企業一覧
- マッキンゼーのLUNAR買収
- マッキンゼーのその他買収戦略
- 一風変わったBCGのブライトハウス買収
- デロイトのヒート買収は大きなインパクト
- Big4系の戦略、デジタルシフト
- 今後もコンサルティング業界の買収は続く
コンサルティング業界は再編期
直近2年(2015-2017)を中心にコンサルティング会社の買収についてまとめた。一部、PwCによるブーズの買収等2015年以前のものも入っている。 外資系のコンサルティングは過渡期を迎えこれまでの経営戦略では生き残りが厳しくなってきた。
従来の戦略ファームと言われているコンサルティング会社は戦略からIT、デザイン、データ分析、デジタルと多岐にわたるサービスの提供を目指し買収をはじめた。
アクセンチュアの買収はこちらにまとめてある。
ピュア戦略と呼ばれていた企業までもが単価を下げての案件獲得や、システム案件に近いもの、オペレーション改善に近いものまで採用している。
採用状況をみても、これまでのMBAホルダー、東大卒、コンサル出身のようなバックグランドから工場のような現場経験豊富な人やSEとして働いていた人までもが戦略コンサルに採用されはじめたのを見るとよくわかる。
Big4系の会計系コンサルティングファームも大きく変化
Big4と呼ばれるコンサルティング会社である、デロイト、KPMG、EY、PwCといった会計系を母体とするコンサルティングファームでも変化がでてきた。 会計系の領域が強かったにもかかわらず、近年はシステム導入をの案件を多数獲得している。
ちなみに会計とITは密接に結びついておりどちらの領域にも強いコンサルタントの市場価値はかなり高い。 一方、上流の戦略案件を取る流れもでてきていると同時にデジタルを我さきにと動いているのがBig4領域の特徴だ。
日本に関してはまだ未開拓な状況で形はあるものの、電通にはまだ及ばないのが実情だ。一方、電通側も企業の戦略に携わろうとしてきているので戦いがすでにはじまっている。 さて、買収した企業についてみていこう。
買収企業一覧
買収元 | 買収先 | 事業内容 | ソース |
マッキンゼー | QuantumBlack | データ技術コンサルティング会社 | ソース |
LUNAR | デザイン会社 | ソース | |
ヴィジュアルDoD | 航空宇宙および軍事分析 | ソース | |
lixto | 価格戦略、価格分析のアドバイス事業 | ソース | |
4tree | 小売分析企業 | ソース | |
PwC | マーバルパートナーズ | M&Aコンサルティングサービス | ソース |
BGT | デジタル広告代理店 | ソース | |
Booz&company | 戦略コンサルティング | ソース | |
デロイト | ヒート(Heat) | 独立系クリエイティブエージェンシー | ソース |
BCG | ブライトハウス | PURPOSE コンサルティング | ソース |
EY | パルテノン | 戦略コンサルティング | ソース |
KPMG | マッチ | フィンテックサービス紹介サイト | ソース |
IBM | ecx.io | デジタル広告代理店 | ソース |
Aperto | デジタル広告代理店 | ソース | |
Resource/Ammirati | デジタルマーケティングエージェンシー | ソース |
これをみると様々な会社が、様々な企業を買っていることがわかるのではなかろうか。件数ベースでは実はIBMがずば抜けて多い。
IBMの買収件数は毎年10件以上で、自社でワトソンも開発しているくらいなので事業会社に近いので当然だろうが、コンサルティングファームとしての買収である広告代理店を掲載させていただいた。
また、買収元企業は正式名称ではなく略称をスペースの関係で利用している。BCG=ボストンコンサルティンググループ、PwC=プライスウォーターハウスクーパースといったところだが、ここらへんは本ブログの読者であればおなじみのところなので説明ははぶく。
ほとんどが海外の動きなので日本の動きに関しては日本は~という注釈の形で説明するのでご注意いただきたい。 一覧をご覧いただいたところで次の章から各ファームの動きについて説明させていただく。
マッキンゼーのLUNAR買収
マッキンゼーはピュア戦略のイメージが強いかもしれないが、多くのコンサルタントと多くの売り上げを支えるために多岐の領域に進出している。 特にLUNARの買収は驚きだっただろう。
LUNARはデザインファームとして長年業界では有名だった。デザインファームとしては30年以上の歴史があり、大手クライアントをもっているファームである。 デザインファームでいくと同様に世界的に有名なIDEOに対して博報堂が30%の株式を取得したことで有名になった。
デザインという領域が注目され始めた昨今、デザイン領域単体で生き残っていくことは難しく(もちろん現状維持は容易であるが)、大手企業と組むことでもっているアセットを最大化できるとデザインファーム側も考えている。
デザイン領域は採用が特に難しい分野でありM&Aによって優秀なデザインコンサルタントを社内に加えることは大きい。 余談だが日本でもデザインコンサルティングファームの人気は高まり、コンサルタントがデザインの勉強をし、デザインコンサルティング領域に進出しようとする人が増えているが、なかなか難しいのが実情だ。
Facebook等のWEB系企業もデザイン領域に進出してきているためデザイン×コンサルという強みをもっていると世界で困らない職業の一つになるだろう。
マッキンゼーのその他買収戦略
マッキンゼーは小売領域のコンサルティングにも進出している。小売は大きな売り上げを占めており、米国ではAmazon(厳密にはECか)やウォルマートといった小売業の影響力が大きく、ネットとリアルが混合している昨今において小売り領域に強いコンサルティングファームになることは重要だ。
アクセンチュアのカートサーモンの買収がそれにあたる。マッキンゼーの買収はこれまでにない領域を強化すべく拡大していっていることがわかる。
VISUALDODという変わった企業も買収している。米国の国防省と関わりのあるコンサルティングファームだ。
なぜVISUALDODかという項目が下記ページにあるが、データベースに関しての興味をもっているようだが、もっと裏の部分もあるのではないかと勘ぐってしまう。 興味のある方はこちらを読んでほしいとおもう。
http://www.mckinsey.com/solutions/visualdod
一風変わったBCGのブライトハウス買収
ボストンコンサルティンググループはブライトハウスを買収した。ブライトハウスは企業や組織の目的の定義付をサポートし、その設定された目的に対し、組織をどのように編成するか、そしてその組織をどのようなカルチャーにしていくかといったPURPOSEコンサルティングという領域に強みをもっている。
人事組織コンサルといった領域もマーサーをはじめ大手コンサルティング会社がプレイヤーとして存在し、コンサルティング市場としても大きいところなので力をいれるだけの価値がある領域だ。
組織コンサルにおいても一部ではあるがデザイン思考が求められ始めているためコンサルティングファーム、コンサルタントも多岐にわたったクロスファンクショナルな強みが求められ始めている。 BCGはその他子会社としてBCGデジタルベンチャーズを設置するなどデジタル領域も強化している。
デロイトのヒート買収は大きなインパクト
デロイトはデジタルエージェンシーであるヒートを買収した。ヒートはただの広告代理店ではなく、クリエイティブ制作能力に長けたエージェンシーであった。
電通は日本国内のテレビ枠を抑えていることで影響力をもたらしているのに対し、ヒートは美しい広告、影響力のある広告を制作できるところに強みがある。
もちろん電通も素晴らしいクリエイティブを作っているので批判をしているわけではないが、ヒートは世界的にみても実績のある企業だった。
設立後10年ちょっとで影響力をもたらす会社となりデロイトに買収され、クリエイティブを皮切りにコンサルティング領域に進出していく非常によい例と今後なっていくことだろう。
Big4系の戦略、デジタルシフト
Big4系のその他の買収の動きはロンドンに本拠地を置くErnst& Youngが戦略コンサルであるパルテノンを買収した。
また、KPMGはフィンテックサービスのキュレーションサイトであるマッチを買収した。狙いはデータベースかもしれないが一事業サービスの買収も同様に驚きだろう。 Big4系は会計系の強みがあることからFintech領域には先んじて取り組んでいたためフィンテックでは勝利を収めようとするのは必然の流れかもしれない。
AI領域のコンサルティングはやや弱い印象がある。 またPwCもデジタルに力をいれていると同時にBooz&Companyを吸収した。日本の話だが旧Booz勢はPwCにいるが給料が高いままなので社内でやや批判の対象ともなっている。
野村証券とリーマンブラザーズの構造を思い出した。Boozは戦略にこだわりすぎるあまり結果として会社が消える運命をたどった。コンサルティング業界の構造が変化していく中で対応を誤るとコンサル側がコンサルされる立場に陥りかねない。
さてIBMについては買収が多すぎると触れたが、IBM買収と検索すると多数の企業がひっかかるので調べてほしい。システムやセキュリティの分野が多いので今回は割愛する。
今後もコンサルティング業界の買収は続く
コンサルティング業界の買収はさらに続くだろう。通常、お金をもらってDD(デューデリジェンス)を行う立場にあるが、自社が買収する場合のプロセスはどうなっているのか気になるところだ。コンサルの自社買収部隊について調べてみたい。
話がそれたが、今後は各社が総合戦略コンサルティングファームとして生き残りをかけて戦っていくことだろう。前述の通り、各コンサルティング会社は広告代理店やIT企業との勝負をしていくのではないだろうか。
いずれにせよ今後も目が離せない。 従来はコンサルティング会社、特に戦略ファームに転職することは無理だと思っていた人たちも実は今は転職が用意になっている。
コンサルティング会社でも様々なことに携われるので現在事業会社にいて興味ある人や下流のITをやっている人でもっと上流に行きたいなど興味がある人は転職を検討してみてもよいと思う。
転職には、【BIZREACH(ビズリーチ)】に登録するとコンサル専門の転職エージェントが数多くいるのでおすすめだ。
リクルートエージェントやDODA直接応募して紹介してもらうのもよい。彼らもコンサル案件をよくもっている。