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大手広告代理店「電通」の労働実態を暴露する

電通で新入社員が自殺する事件があり、広告業界をはじめ、労働環境にメスがはいった。しかしながら、いまだ改善の兆しが見えず長時間労働が続いている会社や業界を目にする。「電通過労死事件」を経て、労働環境に変化があったのか、これからの広告代理店は本当に変わるのかについて大手広告代理店「電通」社の若手社員への取材に成功した。

 電通過労死事件以降会社の仕組みが大きく変化

-簡単に自己紹介をしていただいてよろしいでしょうか?

 数年前に都内の大学を卒業後、某大手広告代理店に入社しました。入社後はラジオテレビ局に配属され在京のテレビ局を中心に枠の買い付け等を担当しています。

-電通事件以後、「働き方」に変化はあったのでしょうか?

 とても変わりましたね。事件以前は、深夜まで残業もよくありました。私の新人時代の話をすると、深夜2,3時まで働くのは毎日で、たまにそのまま飲みに行き、朝5時で少し寝て出勤のようなこともありました。先輩方と一緒にラーメン何杯も深夜に食べ続けるなど精神的にも肉体的にもハードな時代が続きました。

 しかし、事件がメディアに取り上げられて以降、22時退勤ルールが徹底されています。どれだけ残業したくても、会社を出ないといけないので残業をすることができなくなりました。これまで深夜残業となっていた部分はどうなったかというと、朝少し早く来るようになったのはあるのですが、最も大きいのは業務が効率化されたことです。

 今までやらないといけなかった無駄な作業が見直されたことで若手の業務負担は特に減りました。また、クライアントごとに特別な作業が発生していたのですが、全クライアント統一のフォーマットにするなどの工夫もされています。業務効率化を推し進めている背景をクライアントも理解してくれているので協力的です。それに合わせて管理職の仕事も減っているようです。 

 そのほかでは、私はテレビの仕事をしているのですがコアタイムが設定され、取引先であるテレビ局の人が来ていい時間が制限されるようになりました。会社側としてもいつでも対応OKではなくなったということです。 

-会社の仕組みとして取り組みがなされていますね。そもそも広告代理店の業務量が多くなっているのはどうしてなのでしょうか。

 まず簡単に私の仕事を紹介させていただきます。私はメディアの担当なのですが、社内の体制として、営業と、業務推進(業推)と局担当の3つに分かれます。営業というのは、TVCM等を出稿していただける大手企業(スポンサー)を担当し、全体の統括をする仕事です。「うちの会社を通してテレビの枠を買ってください」と営業をする仕事です。営業が社内の売上をあげているわけです。次に業務推進と呼ばれる部署は、スポンサーから獲得した予算を割り振る部署です。

 例えば日本テレビ7000万、フジテレビに5000万、テレビ朝日に6000万円等テレビCMの出し先を割り振ります。その後、業務推進の部署から各局担当に対して「~円の枠を買ってきて」と指示がきます。テレビ局にお願いをして枠を売ってもらう仕事です。

 局担当の仕事は、広告代理店の中でも非常にきつい仕事です。スポンサーや、社内としては、安くいい枠を買いたいわけです。TBSでも、フジテレビでもテレビ東京でも視聴率がいい人気番組ってありますよね。その枠を安く買いたいという需要が当然あるわけです。しかし、テレビ局としては、そのような人気の枠はすぐ売れますし、高く売れる。そうなるとあまり人気のない視聴率の悪い番組を広告代理店に買わせようとします。

 局担当は両方の板ばさみになって、局のためにも働くし、スポンサーのために働かないといけないのでその調整をするのが精神的にきつい仕事です。そのため、メンタルを壊す人も少なくありません。

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 テレビの広告枠の買い方としてタイムとスポットの2種類に分かれます。タイムという のは、番組ごと買い取ります。「この番組は~の提供でお送りしています」となっているのはタイムで買っているわけです。スポットというのは合計視聴率で購入する形式で合計200%といった形で番組を買います。

 人気の番組は変わらず、売れるので問題ないのですが、スポットの買い方だとみなさんご存知のようにテレビの視聴率が下がってきている関係で以前のような買い方が難しくなってきています。以前のような費用を払っても効果が少し下がってしまいます。ただし、テレビCMの売上は昔と比べてもほとんど変わっていないので、スポンサー側に納得してもらって買ってもらうところにも苦労があります。

 説明が長くなりましたが、テレビ局から枠を売ってもらうためには、なんでもしてもらわないといけません。競合の博報堂も同じように番組枠を欲しいわけですから、取られてしまってはスポンサーに顔がたちません。そのため何としてでもテレビ局から枠を買おうとがんばります。「~をしたら枠を買える」というのがないですので、競合を出し抜くべくあの手この手を使います。工夫は無限大にできるのでとにかく仕事が膨大になり、徹底して限界までがんばること自体がテレビ局からも社内からも評価されます。こういった事情が仕事量を多くする原因になります。

 それでも、取引先のテレビ局の人は夜帰るので、局担当であれば帰る時間の目途はあります。例えばクリエイティブ担当は悲惨です。終わりがなく妥協してはいけないのでよりよいものをスポンサーに届けるために限界まで自分を追い込み、上司からも追い込まれ、最高のアウトプットを出そうとしています。そういった職種の人たちは、今回の事件の余波を受けます。 

1年目は残業120時間を超えていた

-終わりが見えないときついですよね。残業時間って1年目のころってどれくらいしていたんですか? 

 1年目のころは残業120~130時間は平気でやっていました。2年目以降になると仕事にも慣れてきたので50-65時間といったところでしょうか。

-残業時間はすべて申請していたのでしょうか?

 当時は時間調整をすることも若干ありましたが、現在はほぼなくなりました。また、残業時間が65時間こえたら絶対に仕事をしてはいけないので、若手や中堅社員が1,2年目の仕事を受け取るようになっています。70時間超える残業がやむをえない月もありますので、そういった時は申請をします。

 しかし、1年目は全くの例外が許されなくなりました。こと1年目の新入社員のケアは徹底されるようになりましたね。本当に労働時間管理は管理職も若手も新入社員も気をつけています。

 私はまだ入社数年しかたっていませんが、昔からすると大きく短期間で会社の仕組みはかわりました。

 暗黙の了解で休憩を長時間とって(とったことにして)労働時間を調整することがおかしいことだとは私自身認識していなかったので今回を機におかしいところを認識しました。

 余談ですが、どうしても22時以降の仕事はお客さんの都合や、撮影等で発生します。その場合、管理職である部長級以上が残り、それ未満の役職の人は全員帰らされます。40代の管理職が最後まで残り、仕事を遂行するという今までの広告代理店ではありえない光景も見られるようになりました。 

-労働以外でも広告代理店は飲み会が多い印象です。激しい飲みは今もあるのですか?

 飲み会の類は当面少なくなりました。テレビ局とのつきあいのイベントもかなりなくなりました。もちろん個人単位では行くことはありますが、社内の飲み会がなくなったことで、飲み会の回数はかなり減りましたね。

-劇的な変化ですね。それでは、社員全体の意識も変わったのでしょうか。

 稼ぎであるメディアの体育会気質は全く変わっていません。年次は山より高く、海より深いという掟は今でもあり、仕事でも飲み会でも先輩の言うことは絶対です。先輩が飲めといったら飲め、食べろといったら食べろという風潮はほとんど変わっていません。

 会社は制度を変えてがんばっており、労働時間や業務量が減りました。でも、人間関係がおよぼす影響に変化はないため社員の意識が変わってはいませんね。

 意識を変えるというのは難しくて、他社に勝つにはなんでもすることが必要でそのマインドを鍛えられるのは重要なんですよね。絶対に勝つことが当たりまえとされている以上は、部下を詰めてでも、泣かしてでもがんばらせて結果を出す必要があって、それがこれまで機能したから売上があげられていました。そうしなくても結果がでればいいのですが、ゆるい雰囲気になるとそれ相応の広告代理店になって、すぐに業界の下に落ちるでしょう。

 仕事で成果を出すためのマインドが変わっていない以上は、会社の制限の範囲内においてはこれまでと考えは変わらないと思います。

-入社以前は激務だとは知っていたのでしょうか?

 入社前から覚悟していました。周りの人も広告代理店に来るくらいなのでわかっています。いわゆるコネ入社の人たちも理解しているでしょう。ちなみにコネ入社の人たちは仕事ができないと言われていますが、むしろ仕事ができる人たちが多いですね。本物のエリートで知力体力ともに優れたまさに広告マン向きの人材がコネ組には多い印象です。

 一部の人は、激務と知らずに入社してきますが、研修を通して知ることになります。社内の研修は20くらいのグループにわけられ、それぞれで20年目の社員と10年目の社員1人ずつが受け持ちます。1か月一緒に行動をし、昼間座学をした後、毎日、終電過ぎまで飲みます。飲み会の方が座学よりも研修っぽくなっていて、飲み会の作法から、接待に使える店を習います。昨年の新入社員からさすがに飲み会の回数が減って、12時には解散になったようです。

 ちなみにこの研修を担当する、20年目と10年目の社員は社内の出世候補であるエースが担当します。飲み代は彼らが支払い、1か月の間に100万円ほどかかります。ほぼ自腹ですが、この役回りは出世コースなので多くの人がやりたがります。この研修は飲みがとにかく多いですが結束が強まり、面倒を見てくれた社員とは数十年にわたる付き合いになります。

メンタルを壊す人は少なくない環境

-飲み会の作法は独特のことはあるのですか?

 作法は独自のものはなく、飲み会でジャケットは脱ぐな、席の配置は役職順にどうなってるか、先輩より先に飲むな、先輩の飲み物が半分になったら次をたのめ、出されたものは全部食べろといったごく当たりまえのことです。 

-電通本体は守れていても下請けや制作会社がさらに激務になると聞きます。彼らの労働環境はどうなっているでしょうか。

 こちらについては直接かかわっていないためお答えできません

-「電通過労死事件」についてご自身のお考えはございますでしょうか。

 1年目の新入社員は労働時間は同じくらい働いており全員きついのは事実ですが、体力的な問題だけでは自殺に追い込むまではならなかったと思います。個人的な考えですが、上司のパワハラといった精神的ストレスのほうがきつかったのではないでしょうか。私自身も上司につめられることが一番きつくてそれでやめようと思ったことが1年目は100回くらいありました。そのため精神的なストレスが相当にひどかったものと思います。

 それでも、通常は1年目は周りが最後は必ず助けてくれるので、そういった周りの助けがなかったことが残念に思います。今回の事件を受けて今後はデジタルの部署に人を大きく増やすなどの対策をとっています。

-会社として若手をどう追い込む風潮なのですか?

 もちろんロジックを詰めることもあるのですが、まずやれ!みたいなカルチャーですね。

 本当に厳しくて体育会で活躍していた人でもメンタルを壊して休職する人がいます。メンタルを壊して休職して、しばらく休む人は良く目にします。会社で行き届いていない部分としてメンタル壊して休職した先輩がまた同じ部署にもどるのはよくないなと思いました。詳しいことは知りませんが人間関係で休職した場合は別部署に動かす配慮も必要だと思います。

-広告代理店の未来についてどのように考えていますか。

 広告代理店の未来は正直言うと、難しいなと思います。

 デジタルシフトしようというのはありますが、これまでのメディアマージンの稼ぎ方がおいしいんですよね。今も売上のだいぶぶんはメディアマージンで、テレビ、雑誌、新聞から脱却ができていません。今後の変わっていかなくてはと思うが、テレビの仕事よりデジタルは儲からないため変わりたくても儲からないからデジタルシフトできないジレンマがあります。

 今までの既得権益がおいしすぎるんですよね。メディアマージンビジネスは効率がいいですからね。局から買って、横に流すだけのビジネスなので。もちろん買い付けの大変さはありますけど、デジタルで同じ額稼ぐことから考えると圧倒的な効率のよさです。そのためデジタルシフトの方向性をとりいれつつ、効率のいい稼ぎ方を模索しなければなりません。

 コンサルのように事業のコアの部分から関わっていく必要があるでしょう。0=>1の部分に関わってコンサルと競っていかないといけません。

 デジタルに関してもライバルがたくさんいるためデロイト、PwC、IBMがライバルになってきて、もはやライバルは博報堂だけではなくってきます。コンサル、IT分野はますます重要になります。 

-学生に戻るとしたら、また広告代理店を目指しますか。

 学生に戻るとしたら今の会社を目指します。というもの学ぶものが非常に多いです。実は、今やりたい仕事をしているかというと全然違う部署にいます。多くの学生と同じく、ミーハー学生だったので企業の戦略とかを考えるマーケティングの仕事をずっとしたかったですし、今でもしたいと思っています。しかし、全然違うメディアの仕事になって、もっと頭を使いたい仕事はしたいです。それでもなぜ今の会社がいいかというと人間的な付き合いというか人情が魅力的です。人間臭い人が多くて一緒に働いていて刺激的ですね。また、仕事への強いこだわりや執着があるからこそ結果が出るわけでそういった姿勢を学べる環境というのは素晴らしいです。あとは年収もいいですし(笑)。 

-良くない点はありますか?

 詰める点に似ているのですが、人前で怒鳴ったりする上司も多いので、そういったこと は辞めた方がいいですね。人前ではほめて怒るのは1対1がいいと思います。取引先の人の前でも平気で怒るのは相手にも印象良くないです。 

広告代理店は裏方であり泥臭い仕事が多い

-広告代理店を目指している就活生にメッセージはありますか。

 泥臭い仕事が多いです。広告代理店ときくとクリエイティブで芸能人と一緒に仕事ができて華々しいというイメージがあるが、泥臭いことが圧倒的に多いです。裏方部分が見たうえで入りたいかどうかを考えてください。

 そもそも広告代理店は名前がでてはいけない、裏方の存在です。広告代理店の人はリーダーや部活のエースや目立つことが好きな人が多いが、そういうイメージをもっているとギャップがつらくて辞める人もいます。裏方である広告代理店でもやりたい人にきてほしいです。

 OB訪問をしても、なかなか本音を聞けないこともあるので、しっかりと目的意識をもってOB訪問をして話を聞いて具体的な広告代理店の仕事を理解してください。OB訪問を今の時期はかなりの数受けますが、数をこなすことが重要と考える学生も多く、ただ会うだけの時間になってお互いにとってもったいない時間になっています。

 OB訪問では弊社に限らずかっこいい部分だけ伝えようとするので、相手から本音を引き出すのもスキルの1つです。広告代理店では交渉において、相手の本音を引きだすことは大事なので、広く言うとOB訪問は仕事にも生きてくるわけです。

 良くない点も多く話してしまいましたが、成長できる環境なので広告代理店を目指す方はお待ちしています。

-ありがとうございました。

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会社は逃げてもいい

 広告代理店の実情についてインタビューさせていただいた。労働時間については、徹底して守る意識が会社としてできており、かつ新入社員への負担を軽くする取り組みができているようだ。しかし、まだまだ、社員の体育会系の意識が抜けない限り真の意味での働きやすい環境は得られないかもしれない。本当に苦しくなったら、会社を辞めてほしい。転職先などはいくらでもある。

ビズリーチは特に転職サイトですぐに動き出しができるのでぜひ利用してほしい。 今、仕事がつらくてもう逃げたければビズリーチに登録し明日スカウトを見てみよう。可能性は転がっているはずだ。

また、二卒でも受けるところはたくさんあるのでご覧になってほしい。

BIZREACH