20代~30代のキャリアを考えるブログ

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現役外資系消費財メーカーのマーケターが語るマーケティングの仕事の中身

外資系メーカー、特にFMCGと呼ばれる消費財メーカーは人気があり、メーカーのなかでも給料は高い。今回は消費財メーカーでマーケターとして勤務する方に取材を行った。マーケティングの考え方の概要、および日系と外資系の違い、年収について述べてある。

グリコを例にマーケティングを解説

-自己紹介をお願いします。

大学卒業後卒業後、外資系消費財メーカーのマーケティング職として入社しています。新卒からずっと一貫してマーケティングの仕事に従事しています。

-消費財メーカーも外資だけで複数ありますし企業ごとのマーケティング手法の違いが分かりません。

FMCG(注:Fast Moving Consumer Goods:消費財)に関していうとマーケティングのとらえ方は似ていると思います。

新しい製品を出すときに機会を見つけて、消費者のニーズがありそうな機会に対してアイデアを出す。そして、複数のアイデアの中から良いものを精査して、採用したアイデアを活用し製品をローンチしていくというプロセスは多くの会社において同じではないでしょうか。

 新しい製品というと、これまでにない全く新しい製品を思い浮かべるかと思いますが、洗剤だとすでにあるブランドの中で、こういう消費者のニーズに対応できる製品が既存のブランドからも出せるのではないだろうか?

ということを考えます。

小売、メーカーにいる方にはなじみのある単語ですが、新しい製品をだすときはカテゴリ(*会社によって呼称が異なる)追加、SKU追加といった形で商品を出します。

 グリコがどのような分け方をしているか分かりませんが、ポッキーを例にとって説明します。

http://www.pocky.jp/products/

 上記のページを見るとポッキーというブランドが存在することがわかりますね。その中にチョコレート味、イチゴ味、アーモンド味というのが存在するのがカテゴリの概念です。

 さらにその下に、チョコレートだと、通常品、細いポッキーといったものがSKUという最小単位となります。季節限定製品もSKUの概念に入ります。もしかしたら極細ポッキーもカテゴリとしてとらえ、ポッキー通常品とは別カテゴリで認識しているかもしれないですが。

 これも勝手な想定ですが、グリコが極細ポッキーをローンチしたときは、外資系消費財メーカー的な考え方でいくと(注:グリコは日系企業)、

a.消費者は食べやすいお菓子を求めている、汚れない、女性の口に入るものが欲しいといった機会が何らかの市場調査によって見つかります。

 

b.機会に対して、チョコの量を減らす、ポッキーを短くする、ポッキーを細くするといったアイデアがでます。

 

c.アイデアの中からポッキーのブランドイメージを損なうことなく消費者を満足させるには、細くするアイデアが良いのではないかいう形で考えが採用されます。

ポッキーを短くすると、ポッキーの細くて長いポッキーのアイデンティティがくずれるから見た目はポッキーらしさを維持したまま新しい製品を出そうとするとアイデアも絞られてきます。

 

d.研究開発やクオリティチェック、工場と連携して消費者が食べても問題ないと判断されると新しい極細ポッキーがローンチされるといった流れです。

 

勝手な想像で書いているのでポッキーの正しい製品開発手法については調べてみてください。

マス広告に携わることが多いマーケター

-マーケティングというと製品開発も重要な役割の1つですが、いわゆるマーケティングだと消費者に知ってもらうための広告開発も重要な仕事だと思います。そうした仕事について教えてください。

 大手の消費財メーカーは日系、外資を問わずテレビCMの作成にあたっては、コンセプトの調査からストーリーボード(絵コンテ)の作成、動画を作成して、消費者調査といった流れはどこの会社も似ているのではないでしょうか。

 また、商材によって大きな考え方が変わってきます。例えば、お菓子や飲料で特にいつ飲む、いつ食べるというのが決まっていない商材だと、いかに衝動的に買わせるかといったことが大事になってきます。飲料でもレッドブルだと、眠い時、がんばるときといったoccasion(購買や利用のシーン)がある程度見えていますね。

 商品の特性以外にも会社にとって大事なことに基づいて製品開発がなされます。例えば、会社として社会貢献を意識しているのであれば、常に製品も社会にとってよいものという価値観が反映されるように意識されます。

大きなフレームワークは会社間で同じでも、意思決定の中に各社のフィロソフィー(哲学)が見えてきます。この辺りは入社しないとわからないのではないでしょうか。

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クリエイティブな仕事というよりクリエイティブを作る仕事

-マーケティングというとクリエイティブなイメージが強いです。クリエイティブな仕事は多いですか?

クリエイティブな仕事かというと、どうですかね。少なくともクリエイティブ(注:制作物のこと)を作る仕事ではあります。デザイン、POP作成、パッケージ開発とクリエイティブに携わる機会が多いです。静止画と動画も作りますし。何かをデザインすることが好きかどうかは、マーケティングの向き不向きとして重要な要素だと思います。

 外資系では特にそうですが、マーケティング部門は女性の占める割合が他の職業より多いと言われています。女性は細かいところへのこだわりが男性よりもあるので向いているのかもしれません。

 文字1つ、ロゴのわずかな配置の違いに関して細部へのこだわりをもてる人は適職だと思います。おおざっぱすぎるとこだわりが強い人とは合わないでしょう。

-マーケティングにあたって、どういったフレームワークがあるか具体的に教えてください。

マーケティングのフレームワークの細かい点は各社によって違うため、フレームワークを具体的にいうとどの会社のものか分かってしまいます。例えば売上をあげるために、

-もっと多くの人に使ってもらおう

-もっと多くの使用回数を促そう

-もっと値段を高くしよう

といったフレームワークがあります。

例えばジュースだと、子供しか飲まないジュースを大人にも飲んでもらおう、1週間に1回しか飲まないものをもっと飲んでもらおう、100円のジュースの値段にプレミアム感をだして150円で販売しようといった具合です。どの戦略をとるかをブランドでdecision makingをしてアイデアを考えます。若手はこうしたデータ分析作業も多くあります。

営業の仕事にはほとんどかかわらない

-営業にかかわる仕事も多いのでしょうか?

基本的に外資系はほとんどが部門別採用なのでいわゆる外回り営業の仕事に携わることはありません。一方で、営業部門と一緒に働く部署はマーケティング部門にあります。洗剤等はまだまだドラッグストアで購入されておりWEBで購入されることは少ないです。

よって小売でいかに他製品に勝つかという観点は重要になってきます。

まずは、消費者の手にとってもらわなければ勝負になりません。消費財メーカーはBtoCと言われますが正確にはBtoBtoCの業界です。自社で販売網がなく、基本的には小売店を挟みます。そのため、棚に並べてもらうにはどうしたらいいかという価格戦略も含めた大枠の営業戦略を考えることもマーケティング部門の仕事になります。

消費者の手にとってもらうのもマーケティングの仕事になります。

例えば、良い場所に並ぶように場所を確保する営業活動や、インストア(店頭)で目立たせるPOPや陳列も営業とともに行うといったことです。

-日系企業だとまずは現場からという考えがありますが、外資は現場営業に配属されませんが、そこのところいかがでしょうか?

小売店とのやりとりをはじめ外回り営業をしたからといってマーケティングに大きく生きるかというとそうではないと思います。

もちろん経験は無駄にはなりませんが、ブランドマーケティングに必要なのは、広い視野を持つことです。ブランドの価値を高めるために最適な投資をして、売上を最大化するという経験を積むためには、マーケターとして早期からキャリアを積むのがよいのではないでしょうか。

一方、ドラッグストアをはじめとする小売店には積極的に足を運び、消費者の動向や店頭での状況を見ておく必要はあります。日常生活の買い物で実践できることです。

また、高い費用をかけて小売店での消費者調査を行います。事前に何も知らされていない消費者の店内での行動を、マーケター側が観察し、購買のニーズを調査します。調査はマーケティングの仕事ではずせません。

季節限定商品のようなプロモーション品を出すなどして、なんとか棚に入ろうとします。店との交渉は卸や営業が行います。場合によっては個店を回る専門部隊も存在し、棚の整理、陳列を店の人と一緒に行います。

労働時間は調整しやすい

-労働時間は長いでしょうか?

新製品のローンチ前は深夜まで働くことがありますが、忙しくないときは自分で調整できます。朝もそれほど早くないですし、働き方は調整できます。しかしベースの労働時間は長いほうでしょう。

-クビになることもありますか?

「パフォーマンスが悪くて君クビね」というよりグローバルの中でポジションが削減されることによって自動的にはじきだされる人が存在します。

日本にあったディレクターの職がなくなったら、そのポジションについていた人の行先はありませんので退職します。 

日本におけるポジション獲得はグローバルの意向が強いのでなかなか読めない部分が多いです。外資系投資銀行のようにいきなり削減情報が流され会社を去らないといけない人が定期的に出るイメージです。

 仕事ができなくてクビはコンサルに比べるとほとんどないに等しいです。

女性が活躍できる業界

-女性も活躍していますか?

管理職含め女性の割合は半分近くいるのではないでしょうか。男女という区分けで意識されることはあまりないです。男性と女性で働くうえで大して障害になることはありません。同僚女性のほとんどはハードワークに耐える強さをもっています。

-グローバル感はありますか?

部署にもよると思いますが、私はグローバル感を感じています。部門や国を超えて意思決定や説得をしていく中で、様々なステークホルダーを巻き込んでいるため、世界で働いている意識はあります。

広告代理店も海外に拠点のある海外の代理店を使うこともありますし、意思決定者や上司が海外にいることも珍しくありません。

外国人に負けない強さが必要

-英語力はどの程度必要ですか?

ネイティブでなくていいものの、自分の意思を伝え、返されたことに素早くこたえるだけの力が必要です。発音や語彙の問題というより外国人に当たり負けない強さが必要になってきます。

押しが強いことで有名なインド人に対しても、負けない強さがないと戦えません。

-年収はどの程度でしょうか?

ざっくり年収帯を説明すると、1000万円を超えるのはブランドマネージャーになるタイミングなので大体5~8年目です。4~5年目くらいだと800~900万円、新卒のときだと350~450万円くらいです。

外資系の他業界に比べると低いです。一方日系のメーカーよりは高いです。また、同期間でも早い段階から階級に差がつきます。会社によっては昇進が遅くブランドマネージャーの最速が30歳手前という会社があるので最速昇進の事例を調べておくとよいですね。

転職組だと30代前半でもアシスタントブランドマネージャーということも珍しくありません。

投資へのオーナーシップがある点が良いところ

-外資系消費財メーカーにおけるマーケティング職の良い点は何でしょうか?

若い年次からPL(Profit and loss:損益計算書)のオーナーシップがある点です。

 早い段階からマネージャーへの昇進も可能ですし、そうなると数十億円規模のPLのオーナーとなり投資の意思決定ができるようになります。

TVCMにはいくら、デジタル広告にはいくら、新聞広告にはいくら、サンプリングにはいくら、と売上の最大化を目指して、広告投下の意思決定ができます。

また、マネージャーでなくてもデジタル広告で与えられた数億円の中から、Facebookにはいくら、Twitterにはいくらとアシスタントマネージャークラスでも意思決定をする機会があります。常にPLに対しての意識を持つことができる機会は他の業界ではないのではないでしょうか。

ベンチャーの新規事業企画でもしない限り、オーナーシップをもってPLを見ることはないように思います。

また、日系へブランドマネージャーとして転職すると、50人規模で部下を持てる会社もありますし、外資で早く昇進して日系にいくというのはいい転職の方法です。

-外資だと部下の人数は少ないのですか?

マネージャーになってもせいぜい数人なので、日系のマネージャーとは管理する人数が違います。少数精鋭で、その分若い部下にもある程度の仕事の量がのっかってくるので1人がさぼるとすぐに分かります。

意思決定に責任を持つ

-マーケティング部門は他部門に対してどのような役割を果たしていますか?

 マーケティングファンクションはオーナーシップが強く意思決定ができます。営業やサプライチェーン、研究開発に対してオーナーシップをもって意思決定に責任を持たないといけません。

年次に関係なく、マーケティング担当者が意思決定をするので1年目の早い段階から大人数の会議で意思決定を求められます。

マネージャーが会議にいなくても、権限を与えられているので自分で意思決定をしないといけません。スピード感もあるため、持ち帰って物事を決めていては仕事がすすまないので、生産の数量や生産スケジュール、意思決定を迫られる場面は多くあります。

大枠自体はマネージャー以上で合意がなされているので、与えられた権限の範囲内でフルに力を発揮する機会に恵まれています。

-外資系消費財メーカーマーケティング職の悪い点はなんでしょうか?

プロフェッショナルな在り方がまだ確立されていない点でしょうか。マーケティングはプロフェッショナルな職業だと市場で評価されていますが、ファイナンスやリーガルの用に、目に見える形での専門性を示すのは難しいところがあります。原理原則がないため、自分でマーケティングのプロフェッショナルであるためには何が必要か、考えて行動し続け、自分なりに言語化をすることが必要です。

また、マーケティングのスキルは、他の職種でも通用する汎用性は決して高くありません。一見汎用性の高い職業に見えますが、FMCGのマーケターは同業のマーケティング職を渡り歩くことが多く、別の仕事で通用する具体的なスキルは、自分で意識しない限り身に着かないと思います。

一方、マネジメントである程度までいかないと、他の職種にはうつれない、意外と選択肢は狭いです。

キャリアパスは様々

-キャリアパスとして日本支社にいる場合、どういう出世の仕方になるのでしょうか?

出世の仕方は様々です。

・地域のマーケティングに責任を持つマネジメントとして、アジアを統括
・ブランド/カテゴリーのマーケテイングとして、ブランド/カテゴリーマジメントをする
・地域のVP、カンパニーのマネジメントになる

 

 どの仕事が偉いというわけでもなく、役職は能力に応じて振り分けられます。世界全体から見ると日本のプレゼンスが低いことも多く、近年の日本支社長はそれほど高い地位にはありません。

-転職先はどういったところでしょうか?

マネージャー以上だと同業他社が多いです。ポジションアップや給与アップ、ワークライフバランスの改善を求めての転職です。

また外資系のIT企業等にも転職します。一方、電通、博報堂をはじめとする日系広告代理店への転職はありません。広告代理店からマーケティング職への転職はありますが、逆はないですね。広告代理店は一緒に働いていて、ワークライフバランスに問題があるのを知っているので行きたがらないのでしょうが。

日系からの転職者はギャップに注意

-転職希望者へのメッセージをお願いします。

やはり、外資と日系の差が大きい気がします。意思決定のスピードとロジカルさ、ファクトベースの考え方が違うので、日系から転職する場合はギャップがあってもキャッチアップのために頑張る気概が必要です。

 また、他業界にもあてはまりますがプロパー(新卒)偏重な部分があります。他部門をリードする役割のため、社内ネットワークが大事なのでハードな環境になります。昇進という観点でも、社内ネットワークを利用して結果が出しやすい新卒の方が有利でしょう。

日系出身者は転職組であまり多くありません。印象としては、トヨタのようにグローバルカンパニーで、ヘッドクオーターがマーケティングを統率している企業で働いていた人は、外資系でも生き残ると思います。

マーケティングを子会社がやっている日系企業や、ブランドマーケティングをヘッドクオーターが統率しておらず、各現場に任されている企業だと、考え方やシステムに戸惑うと思います。

編集後記:

外資系消費財メーカーのマーケティング職として経験がある若手の方にお話しをうかがった。成長志向やグローバルな環境がある分、結果も求められる環境であるので日系から転職してくると大きな違いがでてくるだろう。外資系への転職の場合はビズリーチを活用し、機会を常に探ってほしい。実際に求人がくるのでよい。

また外資なので英語力が必要である。英語が全くできなければスタディサプリ ENGLISHに登録し英語の勉強をすぐにはじめよう。本気で勉強したいときはPROGRITに2ヶ月通うことをおすすめしている。英語は非常に重要である。

今日は以上だ。